厚い雲と、薄く降る霧の雨がかさなり、
冷えを感じる。
ようやく、この時期相応に、もう一枚羽織りたい
気候を知るに至る。
外を運動にするには、このくらいの陽気のほうが
動きやすいものだが、暗い室内で作業などしていると、
血の巡りが鈍くなるのか、手や足から寒くなる。
しぜん、体を丸めじっとしている。作業は鈍調となり
良い考えが浮かばなくなり、そのうち眠くなる。
いかんいかん、と手や首を回したりするが、あまり効果はない。
所長は、朝顔を出した後、2階でずっと寝ている。
のどが痛いんだよ、などと言うが、別に問題はなさそうである。
夕刻になり、食材を買い足しに出かけようとするが、
折悪しく雨がやや強くなる。
それではありあわせのもので間に合わそうということになり、
冷蔵庫をあさる。
土鍋に湯を沸かし、ほんだし、中華味、味覇、豆板醤にテンメン醤、
八丁味噌、醤油、酒などを入れただし汁を用意。
そこに、じゃが芋、人参、牛蒡、ネギ、キャベツ、がんもどきに豆腐、
炒めた豚肉、シメジにエノキ茸などを同形に刻んで入れる。
冷蔵庫の掃除鍋。味付けも適当、行き当たりでやってみる。
ねらいがあるとすれば、いずれかの味が突出することなく
まとまって欲しいと。渾然一体とまでは言いません、恥ずかしくて。
溢れんばかりの山盛り鍋は、煮込むにつれて、かさも落ち着き
食べごろに。
空腹と寒さのおかげで、存外な美味さの鍋となる。
具合が悪いと言っていた所長も、階下にやってきて食う。
えらい食欲である。朝食べたきり、ずっと寝ていたから腹減ったよ。
いい気なものである。
所長は、残っただし汁にラーメンを入れて食べた。
私はぬか漬けを出して、ビールを飲んだ。